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ハンディSLAMで森林を3DGS化|1回歩くだけで林の見える化と樹木計測を両立

ハンディSLAMの計測データから3D Gaussian Splattingで再現した杉・ヒノキの林
目次

株式会社ASOLAB.は、長野県内の杉・ヒノキの林をハンディSLAMで歩いて計測し、そのデータから林の3DGS(3D Gaussian Splatting)と、樹木1本ごとの位置・樹高・胸高直径を作りました。現地でのデータ取得は約10分です。林の様子を立体で見せる記録と、木の太さを表す数値が、1回の現地作業でそろいます。

この記事では、森林や樹木の管理を担当する方に向けて、実証でやったこと、分かったこと、まだ分かっていないことをまとめます。

1回歩くだけで、林の3Dモデルと樹木の数値がそろう

今回の実証で得られたものは、大きく分けて次の2つです。

得られるもの元になるデータ分かること
3DGSカメラの映像林の見た目。幹・下草・地形を写真のような立体で確認できる
樹木ごとの数値点群1本ごとの位置・樹高・胸高直径

どちらも、ハンディSLAMを持って林を歩いた同じ現地作業から作っています。見た目を伝えるための撮影と、太さを測る調査を分けずに済むのが、この方法の利点です。

樹木の管理では、現場の様子が関係者に伝わりにくい

林業の立木調査や、送電線・道路まわりの樹木管理では、木を1本ずつ現地で確かめる作業が欠かせません。いまの現場には、次のような課題があります。

  • 現場の様子を、写真やメモだけで関係者に正確に伝えるのが難しい
  • 目印にピンクテープを巻くため、どの木をどう判断したかがデジタルデータとして残らない
  • 幹の太さは、担当者が1本ずつ周囲を測って記録している
  • 傾斜地や林の中を長時間歩くため、転倒や熊との遭遇といった危険がある

当社は、この「人が歩いて測る」管理を「データで把握して判断する」形に変えるため、樹木解析の仕組みを開発しています。今回の実証は、その最初の検証です。

ハンディSLAMとは?歩きながら林を3Dで記録する計測機器

ハンディSLAMは、手に持って歩きながら、レーザーで周囲の形を測る計測機器です。SLAMは「自分の位置の推定と地図づくりを同時に行う技術」のことで、GPSが届きにくい場所でも使えます。

機器を据え置いて1か所ずつ測る方法と比べて、短い時間で広い範囲を測れます。樹冠に空が隠れる林の中でも、点群(位置を持った点の集まり)を安定して取れました。

実証実験でやったこと

項目内容
場所長野県内の送電線鉄塔の周辺にある、杉・ヒノキの林
範囲小規模な検証エリア
機材ハンディSLAM(付属のカメラを含む)、360度カメラ
データ取得の時間約10分
時期2026年8月

作業は次の順で進めました。

  1. 対象エリアを歩いてハンディSLAMで計測し、同時に映像を撮る
  2. 映像から3DGSを作り、林の様子を立体で再現する
  3. 点群から下草・地面・ノイズを取り除き、樹木を1本ずつ切り分ける
  4. 1本ごとに位置・樹高・胸高直径を計算し、樹木位置図にまとめる
  5. 現地で実測した値や台帳の値と照らし合わせる

3DGSで、現場に行かなくても林の様子が分かる

3D Gaussian Splatting(3DGS)は、撮影した映像から写真のような見た目の3Dモデルを作る技術です。点群は専門の人でないと読み取りにくいのに対し、3DGSなら誰が見ても現場の様子をつかめます。

ハンディSLAMの計測データから3D Gaussian Splattingで再現した杉・ヒノキの林

ドローンで空から撮る3DGSと違い、地上を歩いて撮るので、上空からは樹冠に隠れる幹の並びや林の中の様子まで記録できます。映像はハンディSLAMに付属のカメラで撮ったほか、別の360度カメラでも試し、3DGSの素材としての向き不向きを比べています。

3DGSからは、藪や地面など余計なものを取り除くこともできます。取り除くと幹だけが残り、どの木がどこに立っているかが見やすくなります。

3DGSから藪や地面を取り除き、杉・ヒノキの幹だけを残した林の3Dモデル
上の3DGSから藪や地面などのノイズを取り除いた状態。幹に付けたマーカーも読み取れる

次のような使い道を考えています。

  • 地権者や関係者に、対象の木と範囲を立体で見せて説明する
  • 社内や行政への報告に、客観的な記録として添付する
  • 現場に行かずに状況を確かめ、計画を立てる

ドローン空撮のデータで3DGSを試した記事では、仕組みをより詳しく紹介しています。

3D Gaussian Splattingとは?ドローン空撮データから実際に作成!従来の3Dメッシュモデルと比べてみました

ドローンで実際に撮影した同一の空撮データを使用し、従来から広く用いられている「3Dメッシュモデル」と、話題の新技術「3D Gaussian Splatting」の両方で3Dモデルを作成し比較してみます。

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同じデータから、胸高直径を台帳との差が平均約1cmで推定できた

胸高直径(DBH)は、人の胸の高さで測った幹の直径で、木の大きさや材積を表す基本の値です。現地では、幹の周囲の長さを測ってπで割って求めます。

ハンディSLAMで取得した林の点群。樹木ごとに色分けし、幹の位置と太さを円柱で表示している
取得した点群から地面・下草と樹木を分け、1本ずつ色分けした画面。幹に重なる円柱が推定した位置と太さ

管理台帳と紐付けられた約10本について、点群から推定した胸高直径を台帳の値・現地での実測値と比べました。結果は次のとおりです。

  • 点群と台帳の差は、平均で約1cm
  • 照合したすべての木で、差は±3cm以内
  • 点群の値は、台帳よりわずかに大きめに出る傾向があった

木の数が少ない小さなエリアでの結果なので、そのまま広い範囲に当てはまるとは言えません。それでも、3DGSのための撮影と同じ現地作業で、幹の太さまで読み取れる見通しが立ちました。

解析結果を樹木位置図に自動でまとめる

点群から求めた1本ごとの位置と胸高直径は、樹木位置図として自動で図面にまとめられます。木ごとに番号と胸高直径を記入し、太さの区分(20cm未満・20〜50cm・50cm超)で色を分けています。等高線も重ねて描くので、斜面のどこにどの太さの木が立っているかを1枚で確かめられます。縮尺や用紙サイズを選んで、PDFで出力できます。

点群の解析結果から自動で作った樹木位置図。木ごとに番号と胸高直径を記入し、太さの区分で色分けして等高線を重ねている

3DGSや点群の上で、木ごとの数値を確かめる

解析結果は、図面だけでなく3Dの画面にも重ねて表示できます。3DGSの上に木ごとの番号・胸高直径・樹高を表示すると、見た目の記録と計測値を同じ画面で照らし合わせられます。次の2枚は、今回とは別の現場で同じ仕組みを試したときの画面です。

3DGSで再現した林に、木ごとの番号・胸高直径・樹高を重ねて表示した画面
別の現場の3DGSに解析結果を重ねた画面。木ごとに番号・胸高直径・樹高が表示される
点群の樹木を1本ずつ色分けし、選んだ木の樹高と胸高直径を表示した画面
同じ現場の点群。樹木を1本ずつ色分けし、選んだ木の樹高と胸高直径を表示している

そのほかに試したこと

杉とヒノキを見分ける学習モデル

胸高直径を照らし合わせた約10本を使い、杉とヒノキを見分ける学習モデルを試験的に作りました。木は学習用と判定用に分け、学習に使っていない木で判別を確かめています。映像の樹皮の見た目だけでは間違える木がありましたが、点群から分かる木の形を加えると、判定用の木をすべて正しく判別できました。本数が少ない試験なので、対象を増やして確かめていきます。

ピンクテープの代わりになるマーカー

画像認識でIDを読み取れるマーカーをピンに付けて樹木に取り付け、計測と同時に360度カメラで撮影して、どの木かを読み取れるか試しました。ほぼすべてのマーカーを読み取れ、点群上の樹木と結び付けられました。

従来の管理と何が変わるか

項目従来の方法ハンディSLAMと3DGS(検証中を含む)
現地での記録メモと写真約10分歩いて、点群と映像を取得
現場の様子の説明写真や簡単な図3DGSで林を立体で見せる
幹の太さ1本ずつ周囲を測る点群から一度に推定
木の見分けピンクテープを目で確認マーカーと点群で1本ずつ管理
再現性担当者の経験に左右される同じデータを誰でも確認・再利用できる

計測のために現地を歩く点は従来と同じですが、データ取得は約10分で済むので、傾斜地や林の中にいる時間を短くできます。歩いた結果は立体の記録と数値の両方で残り、あとから何度でも確かめられます。

まだ分かっていないこと

今回の結果は小規模な検証エリアでのものです。実際の業務で使うには、次の点をこれから確かめる必要があります。

  • 広い範囲や複数のエリア、ほかの樹種でも同じ精度が出るか
  • 積雪・降雨・落葉期など、季節や天候でスキャンの品質がどう変わるか
  • 現場の作業の流れや既存のシステムと、どう組み合わせるか
  • 機材・ソフトウェア・運用体制を含めた費用に見合う効果があるか
  • 重要な判断に使う場合の、第三者による精度の検証

林業の立木調査や、送電線まわりの樹木管理に使える

林の様子の記録と幹の太さの計測を一度に済ませられるので、さまざまな樹木の仕事に応用できます。たとえば林業の立木調査(毎木調査)は、いまも輪尺や測高器で1本ずつ測るのが基本です。ドローンの空撮だけでは幹の太さが測りにくいため、地上を歩いて測るハンディSLAMが役に立つ場面があります。

送電線まわりの保安伐採のように、対象の木を特定して記録し、関係者に説明する仕事にも使えると考えています。

当社は林業の現場で、ドローンによる苗木運搬の実証も行っています。

ドローンで苗木を運搬。長野・松本の林業現場で人力片道1時間を往復8分に短縮【林野庁との実証】

長野県松本市で林野庁と実施した、ドローンによる苗木運搬の実証実験。DJI FlyCart 30で人力片道1時間の区間を往復約8分に短縮しました。林業事業者・自治体向けに、導入のメリットや法規制、進め方をわかりやすく解説します。

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まとめ

  • ハンディSLAMで林を約10分歩いて計測し、林の3DGSと樹木1本ごとの数値を同じ現地作業から作れた
  • 3DGSは地上から撮るため、樹冠の下の幹や林の中の様子まで立体で見せられる
  • 胸高直径は台帳との差が平均約1cmで、計測データとしても使える見通しが立った
  • 解析した位置と胸高直径は、等高線付きの樹木位置図に自動でまとめられる
  • 広い範囲や季節による違いは未検証で、これから段階的に確かめる

よくある質問

森林の3DGSは、ドローンで作る3DGSと何が違いますか?
地上を歩いて撮影するため、上空からは樹冠に隠れる幹や林の中の様子まで写ります。ドローンは広い範囲を上から記録するのに向いているので、目的に応じて使い分けます。
計測にはどのくらい時間がかかりますか?
今回の実証では、小規模な検証エリアのデータ取得が約10分で終わりました。広さや地形によって変わるので、範囲をうかがってからお伝えします。
ハンディSLAMで樹木の胸高直径はどのくらいの精度で測れますか?
当社の小規模な実証では、点群から推定した胸高直径と台帳の値との差は平均で約1cmで、照合したすべての木が±3cm以内に収まりました。広い範囲やほかの樹種で同じ精度が出るかは、これから検証します。
GPSが届きにくい林の中でも計測できますか?
できます。SLAMは自分の位置を推定しながら周囲をスキャンするため、GPSに頼りません。実証でも、樹冠に覆われた林内で点群を取得できました。
雪や雨の時期でも計測できますか?
積雪・降雨・落葉期などの季節条件でスキャンの品質が変わる可能性があり、まだ検証できていません。計測時期はご相談のうえで決めます。

森林の3DGS化・点群解析のご相談は株式会社ASOLAB.へ

株式会社ASOLAB.の店舗外観

当社は長野県松本市を拠点に、ドローンやハンディSLAMによる点群の計測・解析と、3DGSを含む3Dモデルの作成を行っています。林業の立木調査、樹木の管理、森林の見える化など、樹木をデータで扱いたい方はご相談ください。まずは小さな範囲での試行からご相談いただけます。

3Dモデルの作成は3Dモデリング、点群計測の内容は測量サービスのページで紹介しています。