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工事現場や造成地で、地面に置かれた白黒の板を見かけたことはありませんか。あれは、ドローンで測量をするときに使う「対空標識(たいくうひょうしき)」という目印です。
ドローンは空から写真を撮るのに、なぜ地上にも目印が必要なのでしょうか。理由は、写真に写った場所と、実際の地面の正確な位置を結びつけるためです。
この記事では、対空標識の役割と、あわせてよく出てくる「標定点(ひょうていてん)」と「検証点(けんしょうてん)」の違いを、図とたとえを使って説明します。ドローン測量をはじめて知る方や、現場で目印を見かけて気になった方に向けて、専門用語をできるだけ使わずに紹介します。
この記事の要点
- 対空標識は「目印」。写真の中で、地上の同じ場所を見つけやすくする
- 標定点は「合わせる」ための点。データを実際の位置にぴったり合わせるのに使う
- 検証点は「確かめる」ための点。位置合わせには使わず、できたデータの答え合わせに使う
この記事に出てくる言葉(タップで開く)
- ドローン測量(UAV測量)
- ドローンで空から写真などを撮り、地面の形や位置を調べる測量。UAVはドローンのことです。
- 対空標識
- 空から写真に写るように、地上に置く目印。白黒の模様で、真ん中が分かりやすくなっています。
- 標定点
- データを実際の位置に「合わせる」ために使う点。
- 検証点
- 位置合わせには使わず、できたデータの「答え合わせ」に使う点。
- 座標
- 場所を「横の位置」と「高さ」の数字で表したもの。
- 点群データ
- 地面や建物の表面を、位置と高さをもった無数の点で表した立体のデータ。
- オルソ画像
- 写真のゆがみを直して、真上から見た地図のようにした画像。
- RTK
- 衛星からの位置情報を補正して、ドローンの位置をより正確に記録するしくみ。
- 公共測量・作業規程の準則
- 国や地方公共団体が費用を負担して行う測量などを「公共測量」といい、その作業方法の基準として国土地理院が定めたものが「作業規程の準則」です。
まず知っておきたい、ドローン測量のしくみ
ドローン測量(UAV測量とも呼びます。UAVはドローンのことです)は、ドローンで空から写真を撮り、その写真から地面の形や位置を調べる方法です。この記事で扱うのは、写真を使う「写真測量」です。
- 1重ねて撮るドローンを決まったルートで飛ばし、少しずつ重なるように、たくさんの写真を撮ります。
- 2形を計算する専用のソフトで写真どうしを照らし合わせ、地面や建物の形を立体的に組み立てます。
- 3データができる立体のデータ(点群データ)や、地図のような写真(オルソ画像)ができあがります。
ただし、写真だけで組み立てた形は、「形」は分かっても、地球上の正確な位置や大きさまではぴったり決まりません。そこで、地上に目印を置いて、正確な位置を教えてあげる必要があります。その目印が対空標識です。
点群データ:地面や建物の表面を、位置と高さの情報をもった無数の点で表した立体のデータです。
オルソ画像:写真のゆがみを直して、真上から見た地図のようにした画像です。詳しくはオルソ画像の基本を解説した記事で紹介しています。
対空標識・標定点・検証点は、何が違うの?
まず押さえておきたいのは、対空標識は「目印そのもの」の名前、標定点と検証点は「点の役割」の名前だということです。
地上の目印
対空標識
同じ目印でも、使い方で呼び名が変わります
| 言葉 | 何のこと? | 何に使う? |
|---|---|---|
| 対空標識 | 地上に置く目印 | 写真の中で、同じ場所を見つける |
| 標定点 | 「合わせる」ための点 | データを実際の位置にぴったり合わせる |
| 検証点 | 「確かめる」ための点 | できたデータが正しいか、答え合わせをする |
同じ形の白黒の目印でも、標定点として使うことも、検証点として使うこともあります。見た目では区別できず、データを作るときに、どちらの役割で使ったかで呼び名が決まります。
対空標識は、写真の中で「ここ」を見つける目印
広い駐車場を空から撮った写真を思い浮かべてみてください。「地上で位置を測ったのは、このあたり」と言われても、写真の中でまったく同じ一点を指すのは難しいものです。
そこで、真ん中が分かりやすい模様の目印を置きます。地上で目印の中心の位置を測っておき、写真でも同じ中心を指定すれば、「写真のこの点は、実際にはこの位置にある」と結びつけられます。
模様にはいくつか種類があります。どれも、「真ん中がどこか」がひと目で分かるように作られています。
- ★型
- X型
- +型
- 円型
位置(座標):測量では、場所を「横の位置」と「高さ」の数字で表します。これを座標といいます。対空標識は、置くだけで位置の基準になるわけではありません。中心の位置を地上で測ることと、写真で同じ中心を読み取ることがセットになって、はじめて役に立ちます。
標定点は、データを実際の位置に「合わせる」ための点
写真から組み立てた立体のデータは、形はきれいでも、そのままでは位置や大きさが少しずつずれています。標定点は、このデータを実際の位置にぴったり合わせるための基準です。
イメージとしては、紙の地図をボードに貼るときに、いくつかの決まった場所を画びょうで留めるようなものです。地上で測った標定点の位置を、データを組み立てる計算の中で使うことで、位置・高さ・向き・大きさが実際と合うように整えます。[1]
検証点は、できたデータを「確かめる」ための点
検証点も、地上で位置を測っておきます。ただし、その位置は、データの位置合わせには使いません。できあがったデータの上で検証点の位置を読み取り、地上で測った位置と比べて、どのくらい差があるかを確かめます。いわば答え合わせのための点で、標定点とは別の場所に置きます。[1]
たとえば、ある検証点で次のような結果になったとします。
この差が、必要な正確さに収まっていれば合格、収まっていなければ原因を調べてやり直します。実際には、高さだけでなく横の位置についても差を調べます。
※数値は説明のための例です。8cmが合格の基準という意味ではなく、当社の成果や保証する精度を示すものでもありません。
標定点 合わせる
地上で位置を測る
データを組み立てる計算に使う
実際の位置に合ったデータになる
検証点 確かめる
地上で位置を測る
計算には使わずに取っておく
できたデータと比べて答え合わせ
同じ点で「合わせて」「確かめて」はだめなの?
標定点は、その位置に合うようにデータを整えるために使っています。そのため、標定点の場所でずれが小さいのは、ある意味で当然です。標定点で合っていても、ほかの場所まで合っているとは限りません。
地面を横から切った断面で見ると、次のようなイメージです。
テストにたとえると分かりやすいかもしれません。標定点は「例題」、検証点は「テスト」にあたります。
答えに合わせて解くので、正解できて当然。これだけでは実力は分からない。
あとで答え合わせをして、はじめて本当に分かっているかが確かめられる。
もちろん、標定点で残ったずれも、計算がうまくいったかを見るために大切です。ただ、その数字と、検証点で調べた差は、分けて確認します。公共測量の基準(国土地理院「作業規程の準則」)でも、標定点に残ったずれ(残差)と、検証点で見つかった差(較差)を、それぞれ点検するように定められています。[1]
検証点として用意していても、その位置をデータの位置合わせに使ってしまえば、答え合わせの役目は果たせません。名前ではなく、計算に使ったかどうかが大事です。
現場では、どんな順番で使うの?
標定点と検証点は、写真を撮る前から役割を分けて準備します。全体の流れを図にすると、次のようになります。
- 計画する何点、どこに置くか
- 置いて測る目印の中心の位置
- ドローンで撮る重ねてたくさん撮影
- 標定点で合わせるデータの位置合わせ
- 検証点で確かめる答え合わせ
それぞれの段階でしていることは、次のとおりです。
- STEP 1計画:どのくらいの正確さが必要かを決める
できたデータを何に使うのか、どの基準に従うのかを確認します。範囲や地形に合わせて、標定点と検証点をどこに何点置くかを決め、番号と役割を記録します。
- STEP 2設置・測定・撮影:目印を置いて、中心の位置を測る
写真で中心が読み取りやすい場所に対空標識を置き、中心の位置を測ってから、ドローンで撮影します。撮影が終わるまで目印が動かないように管理し、点の番号を取り違えないようにします。
- STEP 3解析:標定点を使ってデータを合わせる
写真の中で目印の中心を指定し、標定点の位置を使って、データを実際の位置に合わせます。検証点の位置は、この計算には使わずに取っておきます。
- STEP 4品質確認:検証点で答え合わせをする
取っておいた検証点で、データ上の位置と地上で測った位置を比べます。必要な正確さに収まっているかを確認し、結果を資料にまとめます。
枚数だけでなく、置き方も大切
目印をたくさん置いても、一部の場所にかたよっていたり、写真で中心が見えなかったりすると、うまく合わせることも確かめることもできません。下の図は、配置の考え方を示したイメージです。
図のとおり、標定点と検証点は見た目は同じ目印です。役割の違いは、点の番号と記録で管理します。現場では、ほかにも次のような点に気をつけています。
- 範囲全体や、高いところ・低いところを確認できる配置になっているか
- 草や資材に隠れず、写真で中心が分かる大きさ・模様になっているか
- 風や車の通行などで動かないように固定されているか
- 点の番号・測った位置・役割の記録が、きちんと対応しているか
- 土地の所有者や管理者の許可を得ているか、撮影後の回収まで計画しているか
RTK搭載ドローンなら、対空標識はいらない?
RTKは、衛星からの位置情報を補正して、ドローン自身の位置をより正確に記録するしくみです。RTKなどを使う方法では、従う基準や条件によって、標定点を減らしたり、置かなくてよかったりする場合があります。
ただし、標定点を減らすことと、答え合わせ(精度の確認)を省くことは別の話です。ドローンの位置が正確でも、撮影や計算の条件によって、できたデータにずれが出ることがあります。「RTKだから大丈夫」と決めつけず、検証点などで必要な正確さに収まっているかを確かめます。
従う基準や条件によっては、数を減らしたり、置かなかったりできることがあります。
ドローンの位置が正確でも、できたデータが正しいかは、検証点などで確かめます。
国土交通省の工事の出来上がりを確認する(出来形管理)ための資料でも、条件によって標定点の設置を任意にできる方法がある一方で、精度を確認するための検証点を標定点として使わないことが示されています。公共測量の基準とは対象が異なるため、案件ごとにどの基準に従うかを先に確認しましょう。[2]
この記事は、写真から形を組み立てる「写真測量」の説明です。ドローンからレーザーを当てて測るレーザー測量では、測るしくみや確認の方法が異なります。公共測量の基準では、レーザー測量で使う目印の点は「調整点」と呼ばれ、置き方も別に決められています。[1] レーザー測量との違いは、ドローン写真測量とレーザー測量の違いで紹介しています。
まとめ|目印は同じでも、使う役割は違う
対空標識は、ドローンで撮った写真と実際の地面の位置を結びつけるための目印です。その点を、データを実際の位置に合わせるために使えば標定点、合わせるのには使わず、できたデータの答え合わせに使えば検証点と呼びます。
「合わせるための点」と「確かめるための点」を分けることで、できたデータが本当に正しいかを確かめられます。現場に置かれた白黒の目印には、ドローン測量の正確さを支える大切な役割があるのです。
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参考資料
技術・基準の確認には、国土地理院と国土交通省の資料を参照しています。実務では、業務の目的に合った現行の作業規程・要領と発注仕様を確認してください。
- [1]国土地理院「作業規程の準則」:令和7年3月31日一部改正。第137条(対空標識の模様・色・大きさ・設置と回収)、第413条〜第416条(UAV写真点群測量の標定点・検証点の設置)、第427条・第429条(三次元形状復元計算と、標定点の残差・検証点の較差の点検)、第455条(UAVレーザ測量の調整点)など。
- [2]国土交通省「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」関連の技術概要集:令和8年3月版の掲載資料、16頁。
※掲載した図は、目印と点の役割を説明するための模式図です。実際の標識の寸法・配置・必要な点の数や、個別の現場の精度を示すものではありません。
ドローン測量のご相談は当社へ
当社では、ドローンによる写真測量・レーザー測量など、目的に合わせた測り方と成果物をご案内しています。
「対空標識は何枚くらい必要?」「どのくらい正確に測れる?」といった段階からでもご相談いただけます。ご相談の際は、現場の場所と範囲、データを使う目的、必要な正確さ、希望の時期をお知らせください。「画像で全体を見たい」「図面と重ねたい」「高さや土の量を知りたい」といった使い道から、必要な成果物を一緒に整理します。