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ドローンや赤外線カメラで撮影した赤外線画像から「オルソ画像」を作りたい──。太陽光発電所のホットスポット検出、地質調査、外壁の浮き・剥離調査、橋梁の点検など、赤外線のオルソ画像は点検報告書の説得力を一気に高める手段の一つです。
しかし実際に作ろうとすると、可視画像のオルソ作成に比べて格段に難しいことに気づきます。解像度が低い・コントラストが弱い・DJIのR-JPEGは独自フォーマット──これらの壁にぶつかった点検業者・ドローンパイロットの方は多いはずです。
この記事では、赤外線オルソ画像が「なぜ難しいのか」「どんな手法があるのか」を整理し、主要ソフト(Pix4Dmapper / Agisoft Metashape / DJI Terra / CRITIR)の対応状況を比較します。最後に、外壁・太陽光パネル・橋梁の点検現場で実際に使えるワークフローを紹介します。
この記事の要点
- 赤外線オルソは可視オルソと同じ原理だが、解像度・コントラスト・カメラ独自フォーマットなどの問題で難易度が跳ね上がる
- 主要なアプローチは「サーマル単独SfM」「可視併用+投影」「GPS / フライトログのみ」の3パターン。現場で安定するのは可視併用
- Pix4Dmapper・Metashapeは高機能だが、画像の変換や手動調整・追加ツールが必要な場合も。DJI Terraは対応機種がDJI系に限定
- CRITIR(クリティア)は DJI / FLIR / HIKMICRO の赤外線画像を変換不要で読み込み、可視/赤外線オルソ画像まで自動生成・測定結果まで自動投影できる
赤外線オルソ画像とは
オルソ画像(オルソモザイク)とは、複数枚の写真をつなぎ合わせて遠近のひずみを取り除いた「正射投影画像」のことで、地図のように画像上の距離・面積をそのまま計測できるのが特徴です。

「赤外線オルソ画像」は、可視光カメラの代わりに赤外線サーモグラフィカメラで撮影した画像群から生成されたオルソ画像です。各ピクセルが「温度の分布」を表すため、対象物の異常(ホットスポット、断熱欠陥、浮き・剥離など)を1枚の画像上にマッピングできます。
主な用途
- 太陽光発電所の点検:パネル全体のホットスポット・クラスタ故障・PID をオルソ上で一覧
- 外壁点検(建築物定期報告制度に基づく赤外線調査):浮き・剥離の分布を建物正面の立面オルソとしてまとめる
- 地質調査 : 広範囲をオルソ化して経年の変化をオルソ画像上で確認
- 橋梁点検:橋脚・橋台・床版下面の劣化マッピング
- 屋根・倉庫の断熱調査:屋根全面の断熱欠陥や雨漏り浸入経路の特定
国交省の「定期報告制度における赤外線調査による外壁調査ガイドライン」でも、ドローン赤外線調査の活用が明記されており、報告書にオルソ画像を添付する運用は今後ますます一般的になっていくと考えられます。
なぜ「赤外線オルソ」は可視オルソより難しいのか
赤外線オルソが可視オルソより圧倒的に難しいのは、赤外線画像データの特徴に原因があります。

1. 解像度が低い
可視カメラが 4,000 × 3,000ピクセル(1,200万画素)クラスを当たり前に積んでいるのに対し、ドローン搭載赤外線センサーの主流は 640 × 512ピクセル(約33万画素)。最新の Zenmuse H30T でも 1,280 × 1,024程度です。

画像と画像の位置関係を計算するSfM(多視点画像からカメラ位置と3D点群を復元する技術)は画像間で共通する特徴点を大量に検出することで成立しますが、解像度が低いと特徴点の数が確保しにくく、再構成に失敗しやすくなります。
2. コントラストが弱く特徴点が出にくい
赤外線画像は温度差を表現する画像であり、可視画像のような明確なエッジやテクスチャに乏しい場面が頻発します。とくに均一温度の外壁面・パネル面では「のっぺりした画像」になりがちで、特徴量マッチングが極端に難しくなります。
前処理でコントラストを強調する手法など対策はありますが、設定によっては誤マッチが増えるリスクもあります。
3. DJI R-JPEGは独自フォーマット
DJI製の主要な赤外線カメラ(Matrice 4T / Zenmuse H30T / Mavic 3T / Matrice 30T / Zenmuse H20T 等)は、赤外線画像を DJI独自のR-JPEG形式で保存します。JPEGとして見える画像の中に温度データが独自仕様で埋め込まれている形式で、そのままではPix4DmapperやMetashapeなどで温度として読むことができません。
そのため、Pix4DmapperやMetashapeなどを使用する場合には、CRITIR Convertなどの専用変換ソフトや代行業者を使って変換する必要があります。もしくは変換不要で解析やオルソ画像を作成できるCRITIRを使用します。
赤外線オルソ画像を作る2つのアプローチ
これらの課題を踏まえて、各ソフトウェアが採用している赤外線オルソ生成のアプローチは大きく2つに分かれます。赤外線画像を直接SfMする方法と、可視画像をSfMしてその情報を元に赤外線画像を投影する方法です。

① 赤外線画像だけでSfM → オルソ生成

赤外線画像のみを使ってSfMを行い、そのまま赤外線オルソを生成する最もシンプルな方法です。
- メリット:可視カメラが無くても完結する。サーマル単体のドローンでも実施可
- デメリット:上記の通り解像度・コントラストの壁が高く、撮影枚数が少ないと再構成に失敗しやすい。
- 適した現場:枚数を十分に(重なり80%~90%以上)確保できる平面的な現場
② 【推奨】可視画像でSfM → 同期撮影された赤外線画像を投影

多くのドローン用赤外線カメラ(Zenmuse H20T / H30T / Matrice 30T など)は可視カメラと赤外線カメラを同一機体に搭載しており、同時刻の可視画像とサーマル画像をペアで取得できます。
このペアを活用して、高解像度・高コントラストな可視画像でSfMを実行し、赤外線画像はキャリブレーション情報に基づいて後から投影するのがアプローチ②です。このアプローチでは可視オルソと赤外線オルソ画像が同時に生成できます。
- メリット:SfMの安定性が圧倒的。可視オルソとサーマルオルソが同じ座標で生成されるため、現場確認と熱異常の照合が容易
- デメリット:可視画像と赤外線画像の自動キャリブレーションに対応したソフトが必要。
- 適した現場:外壁・橋梁・太陽光パネルなど、ほぼすべての点検用途。
主要ソフト4製品の赤外線オルソ対応比較【2026年版】
では、実際にどのソフトを選ぶべきか。代表的な4製品(Pix4Dmapper / Agisoft Metashape / DJI Terra / CRITIR)の赤外線オルソ対応状況を整理します。
| 項目 | Pix4Dmapper | Metashape Pro | DJI Terra | CRITIR |
|---|---|---|---|---|
| 赤外線オルソ生成 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| DJI R-JPEG対応 | × | × | ○ | ○ |
| FLIR / HIKMICRO 対応 | ○ | ○ | × | ○ |
| 立面・壁面オルソ | △(手動) | △(手動) | × | ○(自動) |
| 測定結果のオルソ自動投影 | × | × | × | ○ |
| 報告書テンプレート出力 | × | × | × | ○ |
Pix4Dmapper
スイス発のフォトグラメトリソフト。赤外線オルソ画像の生成にも対応し、FLIR Vue Pro / FLIR XTなどの機種をサポートしています。DJIドローン(Zenmuse H20T / H30T / Matrice 30T など)のR-JPEG については、CRITIR Convertなどのツールで事前にTIFF形式に変換する必要があります。
高精度・高機能ですが、立面オルソは投影面の手動定義が必要で、処理パラメータの調整にも一定のノウハウが求められます。
Agisoft Metashape Professional
ロシア発の汎用フォトグラメトリソフト。FLIRのR-JPEG・WIRIS TIFF・AscTec ARAなど複数のサーマルフォーマットに対応しており、マルチスペクトル処理と組み合わせた高度なワークフローを構築できます。
Agisoft公式ガイドラインでは「赤外線画像は解像度が低いため、80〜90% のオーバーラップを確保すること」としています。立面オルソは投影面手動指定が必要で、ROI 設定やマスキングなど手作業の工数が多めです。
DJI Terra
DJI純正のフォトグラメトリ・3Dモデリングソフト。DJIドローンとの親和性が抜群で、M30T / H30T / Mavic 3Tなどで撮影した画像をそのまま読み込めるのが最大の強み。ただし、作成できるオルソ画像は見た目上は赤外線オルソですが、温度情報は残らないため温度の解析はできません。つまり赤外線画像を可視画像として扱ってオルソ化しています。
そして、FLIRやHIKMICROなどDJI以外のサーマルカメラには未対応。また、立面・壁面オルソは生成できません。
CRITIR(クリティア)

CRITIR(クリティア)は、株式会社ASOLAB.が開発する赤外線画像解析・点検・報告書作成統合ソフトウェアです。外壁点検の現場ニーズから生まれたソフトで、上記3製品が苦手とする領域を埋める設計になっています。
- DJI / FLIR / HIKMICRO の赤外線画像を変換不要で読み込み(Matrice 4T / Zenmuse H30T / Mavic 3T / Matrice 30T / Zenmuse H20T / Zenmuse XT2、FLIR T860 / T640bx / T560、HIKMICRO SP60 / SP60H など)
- 立面・壁面オルソを自動生成
- 可視オルソ画像 / 赤外線オルソ画像を同時生成
- 測定・点検結果を他画像やオルソ画像、CAD図面に自動投影(劣化位置の長さ・面積を自動積算)
- 報告書テンプレートを内蔵(写真台帳・赤外線調査・劣化図・劣化数量積算表)
Pix4DmapperやMetashapeと大きく違う特徴として、CRITIRは赤外線画像ではなく同時に撮影される可視画像をもとにSfMを行います。可視画像は通常、赤外線画像よりも広角・解像度高く撮影されるので自然とオーバーラップが確保でき、SfMに非常に有利な条件となります。
そして「赤外線画像解析 + 可視/赤外線/外壁立面オルソ生成 + 測定の自動投影 + 報告書出力」を一気通貫で行えるソフトは他になく、外壁点検・橋梁点検・太陽光パネル点検などを行う点検業者にとって有力な選択肢になります。
赤外線オルソ作成でつまずきやすいポイント
- 撮影オーバーラップ不足:Pix4DmapperやMetashape、DJI Terraを使う場合は重複率をより高く(80%~90%推奨)。
- 温度情報が残らない:赤外線画像の入力に対応していないソフトで作成すると温度情報が残りません。
- 立面オルソ生成:汎用ソフトでは点群作成→メッシュ化→テクスチャ反映→立面の手動定義などノウハウが必要。
CRITIR で赤外線オルソを作る具体的な流れ
Pix4DmapperやMetashapeでは赤外線オルソ画像の作成に各フローでノウハウが必要で、DJI Terraでは温度情報が残らない・立面オルソが作れないという弱点があります。
それらの課題を解決しているCRITIR(クリティア)を例に、赤外線オルソ作成の実際の流れを紹介します。
- 撮影:ドローンまたは地上カメラで建物外壁・太陽光パネル・橋梁を撮影(DJI / FLIR / HIKMICRO のいずれもOK)
- 取り込み:撮影画像をフォルダごとドラッグ&ドロップ。R-JPEGの変換は不要
- オルソ生成実行:ワンクリックで実行
- オルソ選択:壁面の自動推定によって複数のオルソプレビューが提示される。最適な1枚を選ぶ。
- 測定・図面投影:画像上で温度測定・劣化範囲を指定 → オルソ・CAD図面・他画像に自動投影
- 報告書出力:写真台帳・赤外線調査・劣化図・劣化数量積算表のテンプレートで一括出力
「撮影から報告書まで1つのソフトで完結する」のが CRITIR の最大の特徴で、案件あたりのコストや作業工数を大幅に削減できます。


よくある質問
サーマル画像だけでオルソ生成は可能ですか?
可能ですが、撮影条件にシビアです。オーバーラップ80%から場合によっては90%以上が必要となり、撮影枚数が膨大になることも。可視+赤外線画像を同時撮影できるドローンを選び、CRITIRのような可視画像でSfM → 赤外線投影のアプローチが有効です。
何枚撮影すれば良いですか?
対象規模によりますが、建物1棟の外壁なら1面あたり50〜100枚程度、メガソーラーなら数百枚〜になります。枚数よりもオーバーラップ率(80%以上)と対地距離の均一性が重要です。
GPS無しの地上カメラでもオルソは作れますか?
GPSなしでも作れますが、あったほうがSfMには有利です。そしてGPS情報がない場合絶対座標が付かないため、面積・長さの絶対値計測には別途スケール基準(既知長さの物体や GCP)が必要です。CRITIR はスケール設定機能を持ち、地上カメラ撮影でも壁面オルソが生成できます。
処理に高性能PCは必要ですか?
汎用フォトグラメトリソフトはオルソ生成に点群作成やメッシュ化の処理を挟むため、高性能GPUを必須としていることがほとんどです。CRITIRでは対応GPUを搭載していると処理が高速化しますが、必須ではありません。ノートPCでも可能です。
まとめ:点検業者・ドローンパイロットがまず試すべき選択肢
赤外線オルソ画像の作成は、可視オルソ画像の作成より難易度が高い作業ですが、「適切なアプローチと用途に合ったソフト」を選べば、報告書品質のアウトプットを安定して得られます。
- 水平オルソ点検なら:DJI Terra(温度情報なし)または CRITIR
- FLIR / HIKMICROなどの赤外線画像を扱うなら:Pix4Dmapper、Metashape、CRITIR
- DJIの画像を変換なしで扱うなら : CRITIR
- 外壁・橋梁の立面オルソを自動化したいなら:CRITIR
- 汎用フォトグラメトリソフトのノウハウがあるなら : Pix4Dmapper、Metashape
- 測定結果の自動投影・報告書出力までワンストップで行いたいなら:CRITIR
株式会社ASOLAB.では、赤外線オルソを活用した外壁・太陽光パネル・橋梁の点検効率化について、現場の運用に合わせたご提案を行っています。「自社の撮影機材で赤外線オルソが作れるか試したい」「いま使っているソフトより効率化したい」といったお悩み・ご相談をなどありましたらお気軽にご相談ください。




