目次
DJIドローンで撮影した赤外線画像(R-JPEG)をFLIR Tools、FLIR Thermal Studio、Pix4Dmapperなどで使うには、FLIR互換R-JPEGや温度TIFFへの変換が必要です。適切に変換すれば、ピクセル単位の温度値をほぼ完全に保持したまま、既存ソフトのワークフローでそのまま使うことができます。この記事では、変換方法、対応ツール、価格目安、温度精度の検証結果まで解説します。
この記事が向いている人:
- DJI H30T / M3T / M30T / Mavic 3Tなどで撮影した赤外線画像をFLIR ToolsやFLIR Thermal Studioで開きたい
- Pix4DmapperやAgisoft Metashapeで熱赤外線オルソ画像を作りたい
- そもそも「変換」とは何をしているのかを正確に理解したい
- どの変換ツール(代行サービス含む)を選ぶべきか比較したい
この記事を読み終えると分かること:
- なぜDJIのR-JPEGはFLIR系ソフトで開けないのか
- 「変換」処理が内部で何をしているのか
- R-JPEG / TIFF の形式の違いについて
- 主要な変換ツールの比較
- 変換後の温度精度について
1. DJI赤外線画像の変換方法
DJIの赤外線画像を、FLIR ToolsやThermal Studio、Pix4DやMetashapeなどで解析・処理したい場合には、CRITIR Convertのような、変換代行サービスか変換ソフトウェアが必要です。
FLIRのソフトで扱いたい場合にはFLIRのR-JPEG形式に変換し、Pix4DやMetashapeなどで扱いたい場合にはTIFF形式に変換するのが一般的です。
2. なぜDJI赤外線データはそのままでは扱えないのか
2.1 DJIのR-JPEG形式とFLIRのR-JPEG形式

赤外線サーモグラフィ業界は長らく米FLIR(現Teledyne FLIR)が事実上の標準でした。DJIも初期のサーマル機(Zenmuse XT等)ではFLIR製センサーを採用していましたが、2018年に両社の提携が解消され、DJIは独自の温度センサーに移行することになります。
このときDJIは独自のR-JPEG仕様を実装したため、「同じR-JPEGという名前でも、DJI製とFLIR製では中身がまったく別物」という状況が生まれました。これが、DJIの赤外線画像がFLIR Toolsなどで開けない根本原因です。
2.2 DJI R-JPEGとFLIR R-JPEGは何が違うのか
両者ともJPEGファイルに温度データを埋め込んでいる点は共通ですが、DJIが独自のR-JPEGフォーマットを採用しているため中身は大きく異なります。そのためFLIRソフトでは直接DJI R-JPEGを読み込むことはできず、読みこんで解析するためにはDJI独自フォーマットからピクセル温度を取り出し、FLIR仕様にし直す処理が必要になります。これがざっくりとした「変換」の中身です。
2.3 主要解析ソフトのDJI R-JPEG対応状況
実際にどのソフトがどこまで対応しているかをまとめます。
| ソフトウェア | DJI R-JPEG対応 | 備考 |
|---|---|---|
| FLIR Tools | × | 温度解析不可 |
| FLIR Thermal Studio | × | 温度解析不可 |
| Pix4Dmapper | × | TIFF変換が必要 |
| Agisoft Metashape | × | TIFF変換が必要 |
| DJI Thermal Analysis Tool 3(公式) | ◯ | 単純な温度確認は可。複雑な解析は機能不足 |
| CRITIR(クリティア) | ◯ | 変換不要。解析から報告書作成まで。 |
「DJIのドローンは持っているけど、FLIR ToolsやPix4Dが使えないし純正ソフトは使いづらい…」 ── ここが多くのユーザーが詰まる地点です。この問題を解決するために一般的に何が行われているのかを解説します。
3. 出力形式の選び方 — R-JPEG / TIFF
変換出力としてよく使われる形式の特徴を比較します。
| 形式 | 主な用途 | 対応ソフト例 |
|---|---|---|
| FLIR R-JPEG | 既存ワークフロー流用・報告書・点検 | FLIR Tools / Thermal Studio |
| TIFF | オルソ化・学術解析 | Pix4Dmapper / Metashape / QGIS |
3.1 形式を選ぶ判断基準
- 「FLIR Tools系ソフトを使いたい」 → FLIR R-JPEG
- 「赤外線オルソ画像を作成したい」 → TIFF
- 「Pythonなどで解析したい」「学術論文に温度データを使う」 → TIFF
3.2 形式ごとの注意点と特徴
- FLIR R-JPEG: 変換サービスやソフトウェアによっては誤差が出る場合がある。視覚画像も同じファイルに含まれる。
- TIFF: 各ピクセルが浮動小数点℃値を直接保持し温度精度が完璧。視覚画像が含まれないため可視化には別工程が必要。
4. 機種別の対応状況と注意点
DJIのサーマル機種ごとに、変換可否と注意点をまとめました(CRITIR Convertの例。サービスやソフトウェアによって異なります)。
| 機種 | 解像度(熱) | 出力形式 | 変換可否 | 主な用途 / 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Zenmuse H30T | 1280×1024 | R-JPEG | ◯ | 2024年新機種、3段利得モード、最高精度 |
| Zenmuse H20T | 640×512 | R-JPEG | ◯ | 産業用標準機、安定動作 |
| Zenmuse H20N | 640×512 | R-JPEG | ◯ | 夜間撮影特化モデル |
| Matrice 30T (M30T) | 640×512 | R-JPEG | ◯ | M30シリーズ統合機 |
| Matrice 4T (M4T) | 640×512 | R-JPEG | ◯ | 2024年以降の新機種 |
| Mavic 3 Thermal (M3T) | 640×512 | R-JPEG | ◯ | 民生機 |
| Mavic 3T Dock (M3TD) | 640×512 | R-JPEG | ◯ | Dock運用・自動巡回向け |
| Mavic 2 Enterprise Advanced (M2EA) | 640×512 | R-JPEG | ◯ | 小型の産業用ドローン |
| Zenmuse XT S | 336×256 | R-JPEG | ◯ | 旧機種 |
※Zenmuse XT / XT2に関してはFLIR製センサーを採用しているので変換が不要です。
5. 主要なツール6選を徹底比較
代表的な変換手段、または変換不要の解析手段6種類を比較します。各ツールに長所と短所がありますので、自分の使い方に合ったものを選ぶことが重要です。
| ツール | 種別 | 変換形式 | 価格 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| DJI Thermal Analysis Tool 3(公式) | 解析 | — | 無料 | 単発の温度確認だけしたい人 |
| skyeye-japan変換サービス | 変換代行 | FLIR R-JPEG | 要見積(サンプル変換 ¥5,500) | 単発で少量だけ変換したい人 |
| ThermoConverter(英国) | 変換ソフト | FLIR R-JPEG / TIFF | £355 〜 | 英語が苦にならない人 |
| CRITIR Convert | 変換代行/変換ソフト | FLIR R-JPEG / TIFF | ¥5,500~(参考:50枚まで) / 変換ソフト:お問い合わせ | 業務利用・明朗会計を求める人 |
| CRITIR | 解析 | — | ¥237,000 ~ | 変換なしで解析から報告書作成まで一気通貫に行いたい人 |
5.1 各ツールの個別レビュー
DJI Thermal Analysis Tool 3(公式・無料)

DJIが無償提供する純正ツール。R-JPEGを開いて点・線・矩形での温度測定、放射率の事後変更ができます。無料で誰でもすぐに使えるのが長所ですが、高度な解析機能はなく、使い勝手の面から見ても点検業務で利用するのは難しい印象です。ただし「とりあえず温度を確認したい」用途には十分です。
skyeye-japan変換サービス
日本のドローン業者が提供する変換代行サービスです。技術的な手間がゼロで、少量(サンプル3枚 ¥5,500)から試せ、日本語サポートが受けられるのが長所です。ただしソフトウェアとしての販売はないため、自社内で完結できない(画像をアップロード・送付する必要あり)のが短所です。価格に関しても「ASK」と表示されており問い合わせが必要です。
ThermoConverter(英国)

英国の独立系開発者によるソフト。DJI / Autelに対応、TIFFとFLIR R-JPEGを出力可能。価格が明示されていおり(年 £355 / 永続 £1,195、約 ¥7万/年〜¥23万)、トライアル版も用意があります。ただし日本語対応はなく、ポンドでの請求となります。また自社サイトで「TIFF出力の温度値が不正確、修正予定」との不具合が挙げられています。
CRITIR Convert(株式会社ASOLAB.)

株式会社ASOLAB.が提供する変換代行サービスおよび変換ソフトです。FLIR R-JPEG / TIFF変換に対応しており、変換精度の高さをアピールしています。国内開発・日本語サポートがあり、変換代行とソフト購入を選べ、低コストで導入できるのが大きな特徴です。ただしDJI製のドローン専用で、Autel製ドローンには非対応です。
CRITIR(株式会社ASOLAB.)

CRITIR Convertの姉妹ソフトで、こちらの「CRITIR(クリティア)」は変換不要でDJI / FLIR /HIKMICRO社製の赤外線カメラを直接解析できるのが大きな特徴です。可視/赤外線オルソ画像の作成や報告書作成までできるため、これ1つで赤外線点検業務が可能なオールインワンソフトウェアです。ただしただ変換するよりは初期導入コストがかかります。
5.2 ソフト選びで重要なポイント — 変換精度について
価格や対応機種はもちろん大事な要因ですが、温度を解析する上で変換の精度は最も重要です。TIFFへの変換であれば元の温度データをそのまま維持できますが、FLIR R-JPEGへの変換では使用するツールによって変換誤差がどうしても生じます。
そして、その変換精度に直結するのが、「DJIが公式に出している仕組み(SDK)を使っているか、自力で解析しているか」という違いです。
市販のサービスは大きく2種類
- 公式SDKベース: DJIが用意している公式の温度計算ライブラリを内部で呼び出す方式。CRITIR Convertが採用を明言。
- 自力解析方式: DJIのファイルを開いて中身を推測しながら温度を復元する方式。多くのソフトウェアで採用。
これは「DJIが出している正解数値を直接使う」か「ファイルを解析して推測する」かの違いで、変換精度で大きく差が出てくることもあります。また、公式のSDKを採用することで新機種への対応も漏れなく素早く可能というのも大きな特徴です。
6. 変換結果の検証 — 温度精度は本当に保たれるのか
実際に、FLIRのR-JPEGに変換すると元の温度値からどれほどズレるのかを検証してみました。
6.1 検証方法
- 使用ソフト: CRITIR Convert
- 入力: DJI Zenmuse H30Tで撮影した赤外線画像30枚
- 比較対象:
- DJI Thermal SDKが直接返す温度配列
- CRITIR Convertで変換したFLIR R-JPEGの温度配列
- CRITIR Convertで変換したTIFFの温度配列
- 比較指標: 全1,310,720ピクセル(1280×1024)について、SDK値と復号値の差分を集計
6.2 検証結果

| 出力形式 | 平均誤差 | 最大誤差 | 全画素数 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| TIFF | 0.000000 ℃ | 0.000000 ℃ | 1,310,720 | 完全一致 |
| FLIR R-JPEG | 0.0018 ℃ | 0.0042 ℃ | 1,310,720 | 実用上完全に無視できる誤差 |
TIFFは浮動小数点℃値を直接格納するため、誤差はゼロです。CRITIR Convertの場合、FLIR R-JPEGでも実測で最大0.0042℃と、サーモグラフィカメラ自体の測定精度(±2℃、または±2%)よりもはるかに小さい値に収まりました。
6.3 メタデータの保持状況
使用するソフトウェアや代行サービスによっては、元画像のメタデータが正しく保持されないことがあり、FLIRのソフトウェアに読み込むとカメラモデルや温度範囲の情報が狂っているというケースも実際にありました。
CRITIR Convertでの検証を行った結果、全項目が以下のように正しく保持されていました。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 解像度(熱) | 1280×1024 → 1280×1024(完全一致) |
| GPS緯度 | 36.18310942° → 36.18310942°(完全一致) |
| GPS経度 | 137.96530433° → 137.96530433°(完全一致) |
| GPS高度 | 670.566 m → 670.566 m(完全一致) |
| EXIF Make | DJI → DJI(保持) |
| EXIF Model | H30T → H30T(保持) |
| Planck B | 1424.4(H30T仕様値、CameraInfoに正確に格納) |
| Raw統計(min/max/median) | SDK出力と完全一致 |
7. 【実践】DJI R-JPEGをFLIR R-JPEGに変換する手順
ここから実際の操作手順を解説します。CRITIR Convertを例にしますが、考え方は他のツールでも共通です。
Step 1: アプリを起動する

CRITIR Convertを起動すると、ファイルドロップ領域がメイン画面に表示されます。
Step 2: 変換したいDJI R-JPEGを選択する
複数ファイルをまとめて選択するか、フォルダごとドラッグ&ドロップできます。
Step 3: 出力形式を選択する
「FLIR R-JPEG / TIFF / FLIR R-JPEG + TIFF」 から必要な形式を選びます。
Step 4: 出力先フォルダを指定する
元のDJI R-JPEGは変更されず安全に出力されます。
Step 5: 変換を実行する
実行ボタンを押すと、1280×1024のH30T画像で1枚あたり約0.1秒ほどで変換されます(PCのスペックに寄ります)。
Step 6: 完了画面で出力結果を確認する

変換完了時に変換精度とメタデータ保持の検証チェック結果が表示されます。
Step 7: 生成されたFLIR R-JPEGをFLIR Toolsで開く

ここが変換が成功したかどうかの最終確認です。FLIR Toolsなどで開き、サムネイルではなく温度オーバーレイとして表示されることを確認します。カーソルを画像上に動かすと、ピクセルごとの温度値が右下に表示されるはずです。
Step 8: メタデータが保持されていることを確認する
撮影日時 / GPS座標 / 機種名などが保持されているかを確認します。FLIR Toolsの「画像情報」またはExifToolで確認可能です。
これでFLIR Toolsなどの解析機能(エリア温度測定、ヒストグラム、レポート出力等)がそのまま使えるようになります。
8. 「変換せずに解析する」方法
ここまで「変換」を前提に話を進めてきましたが、手間やコストをかけて変換しなくても解析できる手段があります。
8.1 「変換不要」を実現する解析ソフト

DJI R-JPEGを変換不要で解析できれば、変換工程そのものが不要になります。株式会社ASOLAB.では、CRITIR Convertの姉妹ソフトとして変換不要の赤外線画像解析ソフト「CRITIR」も提供しています。
- DJI R-JPEGをそのまま読み込み、温度測定が可能
- Pix4DmapperやMetashapeを使わずに可視オルソ/赤外線オルソ画像の自動生成が可能
- 報告書テンプレートやテンプレートビルダーで独自の報告書作成が効率的に可能
変換と非変換のどちらを選ぶのがよいかは、変換の頻度や業務のフロー、使用しているソフトなどによります。お悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 変換したときの温度値の誤差は?
A. CRITIR ConvertのようにDJIの公式SDKを採用したソフトであれば、実測で最大0.005℃以下、平均0.002℃程度の誤差に収まります。これはサーモグラフィカメラ自体の測定精度(±2℃)よりもはるかに小さい値で、実用上は完全に無視できます。TIFF出力なら誤差ゼロ(完全一致)です。
Q2. バッチ変換はできますか?
A. はい。CRITIR ConvertやThermoConverterは数百枚〜数千枚の一括処理に対応しています。大量の画像を変換する場合は、コスト的に変換代行よりも変換ソフトウェアの導入がおすすめです。
Q3. Macでも使えますか?
A. 主要な変換ツールは現状すべてWindows専用です。Macしか使えない場合は変換代行サービスを使用する選択肢があります。
Q4. 元のDJI R-JPEGは残りますか?
A. はい。一般的に変換ソフトが元画像を上書きすることはありません。
Q5. GPS情報や撮影日時は保持されますか?
A. 使用する変換代行サービスや変換ソフトによっては保持されない、もしくは改変される可能性があります。きちんと保持を明言しているサービスやソフトを使用する必要があります。
Q6. 動画(MP4サーマル)も変換できますか?
A. 主要な変換ツールは現状すべて静止画のみ対応です。
Q7. 変換に失敗するファイルがあります、原因は?
A. 主な原因は次のいずれかです。(1)機種が変換ツールの対応リスト外、(2)ファームウェアバージョンが古い / 新しすぎる、(3) DJI機側の撮影モード設定(タイムスタンプ焼き込みなど)が変換ツールと相性が悪い、(4)ファイル自体が破損している。まずはサンプル変換やトライアル版で1枚試して、機種・ファーム・撮影モードの組み合わせが対応範囲内かを確認してください。
Q8. 一度変換したファイルを再変換することはできますか?
A. 一度FLIR R-JPEGに変換したファイルから、元のDJI R-JPEGに戻すことはできません。
まとめ
DJIドローンの赤外線画像(R-JPEG)をFLIR系ソフトで扱うには、FLIR R-JPEG形式への変換が必須です。変換にも様々な選択肢があり、また変換をしないで解析するという選択肢もあるため、もし悩んだ場合にはサンプル変換や無料トライアルを試したり、実際にお問い合わせしてみることをおすすめします。
株式会社ASOLAB.ではソフトウェアの導入はもちろん、DJIドローンなどの導入に関しても販売代理店としてご相談を承ります。ぜひお気軽にご相談ください。
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