自然界の生物から新技術を学ぶ「バイオミメティクス(biomimetics)」の概念が、
ドローン技術にも応用されています。
特に注目すべきは、
カブトムシの飛翔メカニズムを模倣した新しいドローンの開発です。
この技術により、
狭い空間での飛行性能やエネルギー効率が飛躍的に向上する可能性があります。
EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の
ホアン・ヴー・ファン博士のチームは、
カブトムシの翅(はね)の構造を解明しました。
カブトムシの後翅は折り紙のように折りたたまれ、
前翅(エリトラ)で保護されています。
この構造により、
収納時にはコンパクトに、
展開時には大きな表面積を確保できるのです。
研究者たちは、
高速カメラを用いてカブトムシの翅の動作を観察し、
詳細に記録しました。
その結果、
翅の展開は2段階のプロセスで行われ、
筋肉の活動を必要とせず、
前翅がばねのような役割を果たしていることが分かりました。
このメカニズムを応用した超小型ドローンは、
重量約18グラム、翼を広げた状態では20cm、
折りたたんだ状態では3cmと非常に軽量でコンパクトです。
カブトムシの翅の構造を取り入れることで、
追加のアクチュエーターなしで翼を自動的に展開・収納でき、省エネも実現しています。
このドローンはDCモーターを使用して羽ばたき運動を生成し、
通常のドローンと同様にホバリングも可能です。
さらに、
翼の展開・収納に追加のエネルギーを必要としないため、
狭い空間での飛行や衝突に強い設計が特徴です。
具体的な応用例としては、
災害時の救助活動や環境モニタリングが考えられます。
倒壊した建物や瓦礫の下でも障害物を避けて飛行でき、
衝突時には即座に翼が折りたたまれるため、
ダメージが少なく、
稼働時間を延ばすことが期待できます。
昆虫たちの飛翔メカニズムから学ぶことで、
ドローン技術にはまだまだ多くの可能性が広がっています。
この研究の実用化が進めば、
さまざまな用途が見込まれるでしょう。
参考記事