測量チームの仕事は、ドローンを安全に飛ばすことだけではありません。離陸前にRTK:FIXを確認し、現場では「操縦」「映像共有」「測位」という別々の電波を丁寧に整え、帰社後は3Dや点群の成果物に仕上げていきます。
この記事では、初めての方でも要点をつかめるように、電波の考え方とRTKの使い分け(D-RTK/ネットワーク型)を、最小限の言葉と表でやさしく整理しました。通信の補完にはスターリンク(衛星回線)も活用します。
目次
- 電波の全体像
- 3つの無線系統 役割と切れたときの挙動
- RTK方式の比較 D-RTK vs ネットワーク型
- 使い分けの指針
- 現場チェックリスト(前日/当日/運用中)
- トラブル早見表(症状 → 初動)
- シーン別の“最初の選択肢”
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
1. 電波の全体像
- 操縦:送信機(プロポ)⇄機体
- 映像共有:機体 → 送信機 →(携帯回線 or スターリンク)→ 本部・共有先
- 測位:GNSS(衛星)+ RTK(D-RTK または ネットワーク型)
ポイント:
無線は「操縦・映像・測位」に分けて設計。
測量や高精度点検では、送信機の表示がRTK:FIXになってから本計測。
2. 3つの無線系統 役割と切れたときの挙動
① 操縦リンク(近〜中距離/低遅延)
- 役割:操縦・制御、テレメトリ
- 途絶時:RTH(自動帰還)などフェイルセーフ作動
- 注意:アンテナ向き、見通し、干渉回避
② 映像共有(現場→本部)
- 役割:遠隔の合議・記録・安全確認
- 経路:機体 → 送信機 →(携帯回線 or スターリンク)→ 共有先
- 途絶時:共有映像が止まる(操縦は継続可のことが多い)
- クラウド共有の例:DJI FlightHub 2(ブラウザ視聴・注釈)。送信機から携帯回線/スターリンク経由で配信。※RTK補正とは別機能
③ 測位(RTK)
- 役割:センチメートル級の位置精度
- 方式:
- D-RTK(現場に基準局)
- ネットワーク型RTK(基準局ネットワーク+携帯回線/スターリンク)
3. RTK方式の比較 D-RTK vs ネットワーク型
両方式ともFIXは送信機の画面で確認。 違いは補正データの行き先と通信要件です。
観点 | D-RTK(現場基準局) | ネットワーク型RTK(クラウドRTK) |
---|---|---|
補正データの流れ | 基準局 →(無線)→ 機体 | クラウドRTK →(携帯回線 or スターリンク)→ 送信機 → 機体 |
FIXの確認場所 | 送信機(プロポ)の画面 | 送信機(プロポ)の画面 |
必要な通信 | 現場内無線のみ(携帯回線不要) | データ回線必須(携帯回線/スターリンク) |
設営/初期準備 | 基準局の設置・安定化(例:D-RTK 2/3) | アカウント/NTRIP設定(設置不要) |
強み | 圏外・遮蔽に強く安定 | 機動的・複数現場/複数隊に展開しやすい |
注意点 | 設置場所の確保・安全管理 | 回線品質に依存(圏外は不安定)→ 二重化推奨 |
向く現場 | 山間部/遮蔽が多い | 市街地/移動の多い確認業務 |
ポイント:
D-RTK=基準局→機体(表示は送信機)。ネットワーク型=クラウド→送信機→機体(回線=携帯 or スターリンク)。
4. 使い分けの指針
- 圏外・遮蔽が多い → D-RTKを主方式
- 市街地・複数現場を機動的に回る → ネットワーク型RTK
- 安定化:ネットワーク型時は携帯+スターリンクの二重化
- どちらでも:送信機の「RTK:FIX」を確認してから本計測
5. 現場チェックリスト(前日/当日/運用中)
前日
- (ネットワーク型)接続情報と回線(携帯/スターリンク)を確認
- D-RTK設置点の候補(見通し・安全・電源)
- スターリンクの設置可否・電源
- 共有先で視聴テスト(映像が見えるか)
当日・開始前
- 送信機のRTK表示=FIX
- アンテナ向き・見通し・干渉源チェック
- 共有先で映像+座標が同時に見えるか簡易テスト
運用中
- FLOATが続く:基準局位置/遮蔽/回線品質を見直し
- 映像OK・座標が粗い:RTK経路のみ再接続(D-RTK/ネットワーク型)
- 弱区間や圏外はスターリンクで補完
6. トラブル早見表(症状 → 初動)
- RTK NOT READY(未接続)
初動:D-RTK起動・再接続/NTRIP再ログイン/圏外ならスターリンクへ切替 - RTK FLOATが長い(FIXに入らない)
初動:設置点変更(見通し・反射回避)/回線切替 → FIX確認後に再開 - 映像は来るが座標が荒い
初動:測位系だけ切断の疑い → RTK経路(D-RTK/NTRIP)を再接続 - 共有映像が遅延/停止
初動:解像度/ビットレート下げて調整/回線品質確認/必要ならスターリンクへ切替
7. シーン別の“最初の選択肢”
- 山間部・遮蔽多い:D-RTK主(安定重視)
- 市街地・複数現場:ネットワーク型主(機動重視)
- 広域を素早く確認:ネットワーク型主+必要区間はスターリンクで補完
8. よくある質問(FAQ)
Q. スターリンクはRTK精度に影響しますか?
A. 直接ではなく、ネットワーク型RTKの通信路として使います(圏外補完に有効)。
Q. D-RTKとネットワーク型を同時に運用しますか?
A. 基本はどちらかを主方式に、もう一方バックアップとして準備。現場条件で切替。
Q. 「FIX」と「FLOAT」の実務判断は?
A. FIX=本番OK、FLOAT=改善してから。未接続/切断はまず接続復旧が先。
まとめ
- 無線は操縦・映像・測位の3系統で考える
- 圏外・遮蔽=D-RTK/市街地・機動展開=ネットワーク型
- 本番取得はRTK:FIXを確認してから(回線は携帯+スターリンクで安定化)
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