ドローン測量の電波とRTK入門|D-RTKとネットワーク型の使い分け

2025.09.24 | ドローンブログ

測量チームの仕事は、ドローンを安全に飛ばすことだけではありません。離陸前にRTK:FIXを確認し、現場では「操縦」「映像共有」「測位」という別々の電波を丁寧に整え、帰社後は3Dや点群の成果物に仕上げていきます。

この記事では、初めての方でも要点をつかめるように、電波の考え方とRTKの使い分け(D-RTK/ネットワーク型)を、最小限の言葉と表でやさしく整理しました。通信の補完にはスターリンク(衛星回線)も活用します。

目次

  1. 電波の全体像
  2. 3つの無線系統 役割と切れたときの挙動
  3. RTK方式の比較 D-RTK vs ネットワーク型
  4. 使い分けの指針
  5. 現場チェックリスト(前日/当日/運用中)
  6. トラブル早見表(症状 → 初動)
  7. シーン別の“最初の選択肢”
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ

1. 電波の全体像

  • 操縦:送信機(プロポ)⇄機体
  • 映像共有:機体 → 送信機 →(携帯回線 or スターリンク)→ 本部・共有先
  • 測位:GNSS(衛星)+ RTK(D-RTK または ネットワーク型)

ポイント
無線は「操縦・映像・測位」に分けて設計
測量や高精度点検では、送信機の表示がRTK:FIXになってから本計測。

2. 3つの無線系統 役割と切れたときの挙動

① 操縦リンク(近〜中距離/低遅延)

  • 役割:操縦・制御、テレメトリ
  • 途絶時:RTH(自動帰還)などフェイルセーフ作動
  • 注意:アンテナ向き、見通し、干渉回避

② 映像共有(現場→本部)

  • 役割:遠隔の合議・記録・安全確認
  • 経路:機体 → 送信機 →(携帯回線 or スターリンク)→ 共有先
  • 途絶時:共有映像が止まる(操縦は継続可のことが多い)
  • クラウド共有の例DJI FlightHub 2(ブラウザ視聴・注釈)。送信機から携帯回線/スターリンク経由で配信。※RTK補正とは別機能

③ 測位(RTK)

  • 役割:センチメートル級の位置精度
  • 方式:
    • D-RTK(現場に基準局)
    • ネットワーク型RTK(基準局ネットワーク+携帯回線/スターリンク)

3. RTK方式の比較 D-RTK vs ネットワーク型 

両方式ともFIXは送信機の画面で確認。 違いは補正データの行き先通信要件です。

観点D-RTK(現場基準局)ネットワーク型RTK(クラウドRTK)
補正データの流れ基準局 →(無線)→ 機体クラウドRTK →(携帯回線 or スターリンク)→ 送信機 → 機体
FIXの確認場所送信機(プロポ)の画面送信機(プロポ)の画面
必要な通信現場内無線のみ(携帯回線不要データ回線必須(携帯回線/スターリンク
設営/初期準備基準局の設置・安定化(例:D-RTK 2/3アカウント/NTRIP設定(設置不要)
強み圏外・遮蔽に強く安定機動的・複数現場/複数隊に展開しやすい
注意点設置場所の確保・安全管理回線品質に依存(圏外は不安定)→ 二重化推奨
向く現場山間部/遮蔽が多い市街地/移動の多い確認業務

ポイント
D-RTK=基準局→機体(表示は送信機)。ネットワーク型=クラウド→送信機→機体(回線=携帯 or スターリンク)。

4. 使い分けの指針

  • 圏外・遮蔽が多いD-RTKを主方式
  • 市街地・複数現場を機動的に回るネットワーク型RTK
  • 安定化:ネットワーク型時は携帯+スターリンクの二重化
  • どちらでも:送信機の「RTK:FIX」を確認してから本計測

5. 現場チェックリスト(前日/当日/運用中)

前日

  • (ネットワーク型)接続情報と回線(携帯/スターリンク)を確認
  • D-RTK設置点の候補(見通し・安全・電源)
  • スターリンクの設置可否・電源
  • 共有先で視聴テスト(映像が見えるか)

当日・開始前

  • 送信機のRTK表示=FIX
  • アンテナ向き・見通し・干渉源チェック
  • 共有先で映像+座標が同時に見えるか簡易テスト

運用中

  • FLOATが続く:基準局位置/遮蔽/回線品質を見直し
  • 映像OK・座標が粗い:RTK経路のみ再接続(D-RTK/ネットワーク型)
  • 弱区間や圏外はスターリンクで補完

6. トラブル早見表(症状 → 初動)

  • RTK NOT READY(未接続)
    初動:D-RTK起動・再接続/NTRIP再ログイン/圏外ならスターリンクへ切替
  • RTK FLOATが長い(FIXに入らない)
    初動:設置点変更(見通し・反射回避)/回線切替 → FIX確認後に再開
  • 映像は来るが座標が荒い
    初動:測位系だけ切断の疑い → RTK経路(D-RTK/NTRIP)を再接続
  • 共有映像が遅延/停止
    初動:解像度/ビットレート下げて調整/回線品質確認/必要ならスターリンクへ切替

7. シーン別の“最初の選択肢”

  • 山間部・遮蔽多いD-RTK主(安定重視)
  • 市街地・複数現場ネットワーク型主(機動重視)
  • 広域を素早く確認ネットワーク型主+必要区間はスターリンクで補完

8. よくある質問(FAQ)

Q. スターリンクはRTK精度に影響しますか?

A. 直接ではなく、ネットワーク型RTKの通信路として使います(圏外補完に有効)。

Q. D-RTKとネットワーク型を同時に運用しますか?

A. 基本はどちらかを主方式に、もう一方バックアップとして準備。現場条件で切替。

Q. 「FIX」と「FLOAT」の実務判断は?

A. FIX=本番OKFLOAT=改善してから。未接続/切断はまず接続復旧が先。

まとめ

  • 無線は操縦・映像・測位の3系統で考える
  • 圏外・遮蔽=D-RTK/市街地・機動展開=ネットワーク型
  • 本番取得はRTK:FIXを確認してから(回線は携帯+スターリンクで安定化)

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株式会社ASOLAB.は、RTK(D-RTK/ネットワーク型)とスターリンクなどの最新環境を活用し、安定したドローン測量をご提供しています。

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