株式会社ASOLAB.(長野県松本市)は、2025年12月18日、大町市八板・青木城跡周辺において、
熊対策を主眼とした赤外線ドローン活用の実証デモを実施しました。
本実証では、赤外線カメラおよびレーザー測距機能を搭載したドローンと、
地上部隊(猟友会)が連携することで、
熊対策を中心とした鳥獣対策の現場において、どのような見え方が得られるのか、
また運用上の課題がどこにあるのかを確認しました。
1. 背景と目的
山間部における熊等の大型野生動物の出没増加に伴い、
住民の安全確保や被害の未然防止を目的とした、
より安全で効率的な鳥獣対策手法の検討が求められています。
本実証では、熊対策を想定した実運用に近い形で、
- 起伏の激しい山岳地形
- 谷部や尾根が連続するエリア
において、
赤外線ドローンによる上空からの捜索がどの程度有効か、
また地上部隊との連携にどのような課題があるか
を確認することを目的として実施しました。
2. 実施概要


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施日 | 2025年12月18日 |
| 実施場所 | 大町市 八板・青木城跡周辺 |
| 連携機関 | 大町市危機管理課/地元猟友会 |
| 実施内容 | ドローンによる広域捜索(可視+赤外線) 地上部隊との連携検証 |
3. 使用機体・搭載センサー

| 機体 | 搭載センサー | 用途 |
|---|---|---|
| DJI Matrice 400 RTK | Zenmuse H30T(可視光+赤外線+レーザー測距) | 広域捜索・位置把握 |
4. 検証方法・条件
- 想定対象: 熊等の大型野生動物
- 捜索エリア: 山岳・谷部・尾根を含む広域
- 天候条件:
・気温:約4℃
・小雪または小雨が断続的に降る状況
・曇天(直射日光ほぼ無し) - 方法:
・赤外線映像と可視映像を併用した上空からの捜索
・地上部隊(猟友会)の行動と並行した確認
5. 検証結果
今回、対象として想定していた熊の個体は確認できませんでしたが、
赤外線映像による捜索の結果、
- カモシカ:1個体
- 未確定個体:1個体
の 計2個体 を確認しました。
林の中に潜んでいる状態でも、
赤外線映像上では体温のみが明確に表示され、
背景との区別がしやすい状態であることが確認できました。
カモシカ


※可視光:40.0X 赤外線:16.0X
未確定個体


※可視光:40.0X 赤外線:32.0X
共通して得られた知見
- 林内に潜んでいる状態でも、赤外線映像では体温のみが明確に識別可能
- 可視映像単独では判別が難しい場面でも、赤外線の併用により把握しやすい
- 低温・日射の少ない環境では、検知性が高まる傾向が確認された
6. 検証結果の整理と要点
技術的所見
| 観点 | 所見 |
|---|---|
| 赤外線性能 | 体温と背景の温度差が明確で、識別性は良好 |
| 測距機能 | 位置情報・移動方向把握に活用できる可能性 |
| 適性シーン | エリアがある程度絞られた状況での捜索支援 |
確認できたポイント
- 赤外線ドローンは林内に潜む個体の存在把握に有効
- 環境条件(気温・日照)が見え方に大きく影響する
- 上空と地上の情報共有方法が運用上の重要ポイントとなる
7. まとめ

本実証は、熊対策を主眼とした鳥獣対策の実証デモとして、
実際の山岳環境下での赤外線ドローンの見え方や、
地上部隊と連携する際の課題を確認することを目的として実施しました。
熊の個体は確認されなかったものの、
赤外線による動物検知の有効性や、
環境条件が結果に与える影響を把握することができました。
ドローンは主役ではなく、
地上部隊の判断を補助し、負担を軽減するための支援ツールとして
どのように活用するかが重要であると再認識しました。
株式会社ASOLAB.では、今回得られた知見をもとに、
今後も実証と検討を重ねながら、
現場で無理なく活用できる熊対策・鳥獣対策としてのドローン運用を検討していきます。
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