熊対策に備えた赤外線ドローンの見え方検証レポート(松本市)

2025.11.05 | ドローンブログ

株式会社ASOLAB.(長野県松本市)は、2025年11月4日に赤外線カメラ搭載ドローンによる熱源(動物)検知テストを実施しました。

近年、株式会社ASOLAB.にも熊の出没に関する相談が寄せられており、実際に依頼を受けた際の緊急性を踏まえ、事前検証として“どの程度見えるのか”を確認することを目的としています。

今回は熊の代替として、犬を「熱源ターゲット」として森林付近に配置し、可視光・赤外線の双方で検知性を検証しました。

1. 背景と目的

  • 地域での熊目撃情報の増加に伴い、「ドローンで熊を探せないか?」という相談が複数発生
  • 実際の出動時は緊急性が高い想定のため、事前に検知性能・距離感・撮影条件を確認しておく必要性が浮上
  • 赤外線カメラによる小型動物の検知性を把握し、技術的な基礎データを取得することを目的として実施

2. 実施概要

項目内容
実施日2025年11月4日
場所長野県松本市内
実施チームASOLAB. 技術チーム
想定シナリオ森林周辺での動物(熊)検知・捜索支援

3. 使用機体・搭載センサー

機種搭載センサー用途の想定
DJI Matrice 400 RTKZenmuse H30T(可視光+赤外線)本命検知・記録・状況把握
DJI Mavic 3 Thermal内蔵赤外線カメラ軽度の探索・確認
Matrice 400 RTK(H30T)
Matrice 400 RTK(H30T)

4. 検証方法・条件

  • 対象(熱源): 飼い犬1頭をターゲットとして配置
  • 飛行高度: 約30〜70m
  • 天候: 晴れ(外気温 約15℃)
  • モード: 赤外線映像(Thermal)+可視光映像(Visual)の同時撮影
  • 飛行パターン: 森林付近の範囲を定速航行し、熱源検知性を比較

5. 検証結果

Matrice 400 RTK(H30T)

  • 熱源の位置・輪郭を明瞭に捉えることが可能
  • 動いている状態では特に検知が容易
  • 可視光との重ね合わせにより、位置関係(地形・建物・距離)が把握しやすい
Matrice 400 RTK(H30T)の赤外・可視画像
Matrice 400 RTK(H30T)の赤外・可視画像

Mavic 3 Thermal

  • 熱源は確認可能だが、解像度および視認性はH30Tに劣る
  • 小型で準備が早く、初動対応や短時間確認には有効
Mavic 3 Thermal の赤外・可視画像
Mavic 3 Thermal の赤外・可視画像

共通して得られた知見

  • 動体の方が検知しやすい: 静止より動きのある状態で認識性が向上
  • 森林奥は検知に制約: 樹木や枝の遮蔽により視認性が変化
  • 広域捜索は別手法併用が望ましい: エリア特定がされている状況下で有効性が高い

6. 検証結果の整理と要点

技術的所見

観点所見
赤外線性能H30Tは輪郭判別が可能なレベルで検知性良好
可視光併用地形・建物との位置関係把握に有効
適性シーン「エリアが絞られた状況」での探索支援に適する

確認できた3つのポイント

  • H30Tは熊サイズの動物探索にも応用可能な視認性を確認
  • M3Tは初動確認・軽度探索に有効(機動力◎)
  • 赤外線+可視光の併用が位置把握に有効であることを確認

7. まとめ

今回の検証は、熊対策を想定した赤外線ドローンの“見え方”を事前に確認することを目的として実施しました。
H30TおよびMavic 3 Thermalによる比較を通じて、森林周辺での熱源検知の有効性と、運用シーンによる適性の違いを把握する貴重な機会となりました。

株式会社ASOLAB.では、地域で求められるドローン活用の在り方を、技術検証を通じて検討し、必要に応じて迅速な対応ができるよう体制整備に努めてまいります。

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