はじめに
ドローン測量の現場では、リアルタイムの通信環境が業務の精度と効率を左右します。
特にRTK測位やデータ共有を行う際、インターネットが不安定だと補正データが途絶し、クラウド処理や発注者との連携が滞ることもあります。
山間部や災害現場では携帯電波が届かず、測量を進めること自体が困難になるケースも少なくありません。
そこで注目されるのが、衛星インターネット「Starlink(スターリンク)」です。
株式会社ASOLAB.でも防災訓練や測量業務で導入を進めており、本記事では活用方法・実証事例・課題整理をお伝えします。
スターリンクとは?
スターリンクは、SpaceX社(イーロン・マスク氏が創業)が提供する衛星インターネットサービスです。
数千基の低軌道衛星を利用し、山間部や僻地でも高速・低遅延の通信を可能にします。
従来の携帯回線や光回線が届かない現場でも、20〜100Mbpsクラスの通信を確保できる点が特徴です。
スターリンクで変わるドローン測量の可能性
スターリンクを導入することで、ドローン測量において次のような変化が期待できます。
1. 測位精度を安定化
- ネットワーク型RTK(代表的な方式がVRS)を利用するための安定した回線を確保。
- 山間部でもセンチメートル級の測位が可能に。
2. データのリアルタイム共有
- 点群や写真データをクラウドに即時アップロードし、遠隔拠点で確認。
- 映像をリアルタイム配信して発注者や技術者が現場と同時に情報を得られる。
3. 災害対応での通信確保
- 災害時の孤立現場でも、通信拠点を迅速に構築。
- 測量だけでなく、防災本部との連携や情報伝達手段として機能。
【株式会社ASOLAB.事例①】測量現場のスターリンク活用法

RTK測位とスターリンク
ドローン測量でセンチメートル級の精度を得るには、RTK測位が欠かせません。
RTKには以下の方式があります。
- 物理基準局方式(D-RTK 3)
→ 基準局を現場に設置し、インターネット接続は不要。 - ネットワーク型RTK(代表的な方式がVRS)
→ ネットワーク型RTKは“方式”であり、ドローンが利用する仕組み。
→ ドローンがインターネット経由で補正データを取得するため、スターリンクが通信回線として活躍。
具体的な利用シーン
- ネットワーク型RTK補正データをスターリンク経由で安定受信(例:Matrice 400 RTK × Starlink Mini)
- 現場から店舗PCへデータを直接送信し、即時処理を開始
- 携帯電波が圏外の山中でも、連絡手段を確保し、孤立リスクを低減
設置時の工夫とStarlink Miniのメリット
(※ここに「Starlink Miniを現場に設置した様子」の写真を挿入)
スターリンクのアンテナは空が開けた場所に設置する必要があり、山中では場所選びが課題になることがあります。
そのため、必要に応じて高さや角度を調整する工夫も有効です。
株式会社ASOLAB.で利用している Starlink Mini は、従来のStandard Kitよりも小型・軽量で持ち運びやすく、測量現場に持ち込む際の負担を軽減できます。
特に山間部や急な現場対応では「すぐに展開できる」点が大きなメリットです。
(参考:2025年1月時点で本体価格は約34,800円、月額利用は6,500円〜のプランが提供されています)
【株式会社ASOLAB.事例②】防災訓練での実証結果

飯田市で行われた防災訓練にて、Matrice 400 RTK × Starlink Miniを用いた映像配信を実施しました。
結果:
- リアルタイム配信は可能だったが、映像がカクつく/停止する場面も発生
- 災害時を想定した実証実験で現場にインターネット環境を構築できた点は大きな成果
【株式会社ASOLAB.】ドローン測量チームの声
実際にスターリンクを利用したスタッフの感想です。
「山の中でまったく電波が入らない場所でも、スターリンクを立てれば測量用のネットが使えるのは本当に助かった。
今まで連絡手段がゼロというリスクが常にあったので、つながるだけで安心感が全然違う。」
「アンテナから50m以上離れると電波が弱くなり、移動しながらの作業はやりにくい。
木が多い山中では、空が開けた設置場所を探すのに手間がかかった。」
現場からの率直な声として、安心感と課題の両面を示しています。
他社の成功事例
KDDI × 大林組
- スターリンクをバックホール回線として利用
- ダム・トンネル工事現場でLTE基地局を構築
- ドローンやロボットの3D点群データを10秒以内に遠隔送信
Emlid(測量機器メーカー)
- 山間部でスターリンクを活用し、ネットワーク型RTK補正データを安定受信
- センチメートル級の測位精度を確保
まとめ
スターリンクは、測量や点検の精度向上と災害現場での安心感を同時に実現できる新しい通信インフラです。
当社の防災訓練やチームの声からも、その有効性と課題の両方が確認できました。
今後も「どんな現場に有効か」「どう設置すれば安定するか」を整理し、測量や建設業務に役立てていきます。
メリットと課題の整理
項目 | メリット | 課題・注意点 |
---|---|---|
RTK補正データ受信 | 山間部でもネットワーク型RTK補正が可能、センチメートル級精度を確保 | 安定通信が必須、設置条件で不安定化 |
データ共有 | 店舗PCへ即時データ送信、遠隔拠点と同時確認可能 | 回線帯域に依存、映像はカクつきが出る場合あり |
安全・安心面 | 圏外の山中でも連絡手段を確保、孤立リスク低減 | アンテナから離れると弱まる 当社事例:50m以上で不安定 |
災害対応 | 短時間で通信拠点を構築、防災本部との連携に有効 | 設置には空が開けた環境が必要 |
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